「ライターはオワコン」という予言から1年半。2025年の大晦日に、AIとの共存を振り返る

「生成AIがやばい。ライターの仕事はなくなる」

2024年の春、業界を駆け巡ったこの言葉を覚えているでしょうか。 ChatGPT-4oやClaude 3が登場し、誰もがその性能に驚愕し、そして畏怖したあの頃。「平均的な文章しか書けないライターは淘汰される」「Webライターはオワコンだ」という悲観的な予測が、まことしやかに囁かれました。

あれから1年半以上が経ちました。今日、2025年の大晦日を迎えていますが、2匹の猫に邪魔されながらキーボードを叩いていますし、ありがたいことに多くのクライアントと仕事を続けています。

かつて「オワコン」と予言された未来は、現実になったのか。それとも全く違う景色が広がっているのか。 iworksにとっての転換点となった「2024年9月」を振り返りながら、これからのライターのあり方について綴ってみたいと思います。

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予言は半分当たり、半分外れた

かつて言われていた「Webライターオワコン説」。2025年現在、この予測は半分現実になっています。 確かに、情報を右から左へ流すだけの「コタツ記事」や、SEOキーワードを詰め込んだだけの無機質なコンテンツ作成の仕事は減りました。その領域は、予想通りAIが完全に代替しています。

では、ライターという職業が消滅したかといえば、全くそうではありません。なぜか。 それは、「AIが出した文章が、本当に正しいのか判断できない」「誰にでも書ける文章では、誰の心も動かせない」という事実に、多くの人が気づき始めたからです。

AIの登場によって、ライター業界は「世の中に紙媒体しかなく、限られた人しかライターになれなかった時代」に回帰しはじめたように感じます。

誰でもなれるわけではない、プロフェッショナルな仕事への回帰。 iworksにとっての大きな分かれ道は、その「新しい知的専門職の時代」をどう生きるかという決断にありました。 AIを「敵(仕事を奪うもの)」として恐れるのではなく、「相棒(仕事を助けるもの)」として迎え入れること。この時の決断が、今のiworksの制作体制を支えています。

2024年9月がiworksの転機

iworksにとっての「AI元年」は、世間の熱狂から少し遅れた2024年9月です。 この時、私は「AIライティングツール」の本格導入を決めました。ここからが、私とAIとの本当の意味での付き合いの始まりです。

正直に言えば、導入は簡単な決断ではありませんでした。「書くことが生業なのに、それを機械に任せていいのか」「それは物書きとしてのプライドを捨てることではないか」私にもライターさんたちにも葛藤の空気はありました。

実際、AI活用へと舵を切ったタイミングで、iworksを去る決断をしたライターさんもいました。信頼できるパートナーとの別れは、決して軽いものではありません。それぞれの「書くこと」への向き合い方や信念の違いであり、どちらが正解というものでもなかったと思います。

それでも私は、「変化を受け入れ、進化する」という道を選びました。 迷いを乗り越えて、実際に使い始めて気づいたことがあります。 AIは、私たちが本来注力すべき「創造性」を取り戻させてくれる存在だと。

AIに「平均点」を任せ、人間は「満点以上」を目指す

かつては、情報の網羅性や構成案の作成に多くの時間を割いていました。しかし、2024年9月以降、私たちはその役割をAIという「相棒」に委ねました。

AIが作った「論理的で整然とした(しかし無機質な)80点の原稿」。 そこへ、私たち人間が「問いを立てる力(編集力)」で方向性を指し示し、「血を通わせる力(感性)」で読者の感情を揺さぶる言葉を吹き込み、「責任を負う力(品質保証)」で信頼を担保する。そうすることで、かつて人間だけで作っていた時よりも、遥かに高品質なコンテンツを、スピーディーに、しかもたくさん生み出せるようになりました。

取材と専門性、そして「熱量」

2024年当時の予測記事では、「生き残る道は取材と専門性しかない」という見解がありました。これは2025年の今も真実です。

AIは、ネット上の情報は知っていても、目の前のクライアントが抱える「情熱」や「悔しさ」、現場の「空気感」を知ることはできません。だからこそ、現場に足を運び、生の声を聞く「取材」の価値は、相対的に跳ね上がりました。

専門性についても同様です。AIはもっともらしい嘘をつくことがあります。だからこそ、その嘘を見抜き、独自の視点で論じられる「専門知識を持つ書き手」は、依然として重宝されています。

ただ、ここでも変化がありました。 AIのおかげで、取材のテープ起こしや要約、専門分野の基礎リサーチにかかる時間は大幅に短縮。その浮いた時間で、私たちはより深く対象者に寄り添い、より深く思考を巡らせることができるようになったのです。

2026年に向けて。ライターは「書く人」から「創る人」へ

2024年の春に恐れられていた「ライターの淘汰」は、ある意味で「業界の健全化」だったのかもしれません。「とりあえず文字が書ければいい」という「Webライターバブル」の時代は終わり、「言葉を使って何を実現するか」が問われる時代に戻ったのです。

この1年半、変化から逃げることなく、正面から向き合ってきました。AIという相棒を得て、ライターという仕事はもっと面白く、もっとクリエイティブなものに進化しました。

AIにできることはAIに。人間にしかできないことは人間に。 この役割分担が明確になった今、私たちが届けるべきは、情報(Information)だけでなく、感情(Emotion)や体験(Experience)、そして熱量(Passion)です。

2026年も、iworksは変化を恐れず、「人の心を動かすコンテンツ」を追求し続けます。

1年半前の不安に包まれていた業界に伝えてあげたいですね。「心配するな。AIと一緒に働く未来は、意外と悪くないぞ」と。

皆様、よいお年をお迎えください。

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