「経営者の理念を取り上げるメディアです。取材・掲載費用は一切かかりません」
1通だけの営業メールなら、いつものようにスルーするところです。ところが、同じ会社や関連会社から似たようなメールや同様のサービスの営業が何度も繰り返し届いたことで、少し気持ち悪さを感じました。
こうした営業手法は「取材商法」と呼ばれています。Webサイトを公開している中小企業や個人事業主であれば、同様のメールが届いた経験がある方も少なくないと思います。この記事では、実体験をもとに取材商法の手口・見分け方・対処法をまとめます。
取材商法とは何ですか?
取材商法とは、「無料で取材・掲載する」という入口で中小企業や個人事業主の経営者にアプローチし、その後に有料サービスや別の営業へ誘導することを目的とした営業手法の総称です。
「取材」という言葉には、メディアに取り上げてもらえるという期待感があります。取材商法はその心理を利用し、経営者の警戒心を解いてから次のステップへ誘導します。
実際に届いたメールで感じた違和感
最初の1通は「取材商法かな」と感じてスルーしました。ところがその後も、別の社名・別の担当者名義で、同じような内容のメールが続けて届きました。気になって調べてみると、送信元は住所が同じビルの同じフロア。グループ会社や関連会社が、それぞれ別窓口として営業している構造でした。個別の番号やアドレスをブロックしても次々と別窓口から届くのは、こうした構造が理由だと思われます。
複数のメールを見ていくうちに、いくつかの共通した特徴が見えてきました。
「費用ゼロ」を繰り返し強調している
「取材・掲載・二次利用いずれも費用は一切発生しません」「後日の追加費用のご案内等もございません」という表現が繰り返されていました。本物のメディア取材であれば、費用がかからないことはそもそも当然であり、ここまで強調する必要はないはずです。それだけ「有料だと思われている」という認識があるからこそ、先回りして打ち消しているのではないかと感じました。
取材とは無関係のサービス案内がセットになっている
ある担当者のメールには、取材の話とは別に「営業リスト100社分を無料提供します」という一文がありました。取材メディアの運営会社が本来は営業支援・リスト販売を主業とする会社であることが、この一文で透けて見えました。取材はあくまで入口に過ぎないと判断した決め手でした。
著名人の対談実績を「信頼の証拠」として使っている
メール内に「〇〇さんとの対談記事はこちらです」というリンクが貼られていました。著名人が取材を受けた事実と、自社が掲載されることの効果は、まったく別の話です。実績として提示されてはいますが、媒体の質や読者層を判断する材料にはなりません。
取材商法かどうかを見分けるチェックリスト
届いたメールに以下の要素が複数当てはまる場合は、取材商法の可能性があります。
- ✅ 「無料」「費用ゼロ」を繰り返し強調している
- ✅ 送信元の会社がメディア運営以外を主業としている
- ✅ 取材とは無関係のサービス案内がセットになっている
- ✅ 「枠に限りがある」「今週中にご返答を」など急かす表現がある
届いたときの対処法
基本はスルーでよい
興味がない場合、返信しないのが最も安全です。返信することで「このアドレスは有効」と認識され、別の担当者や別の会社名義でさらに連絡が来るリスクがあります。
繰り返し届いて困る場合は:個人情報利用停止の申し入れ
同一グループから複数の窓口で繰り返し連絡が来る場合は、個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)第35条に基づき、利用停止・消去の申し入れができます。
送り先は相手会社のWebサイトにある問い合わせフォームまたはメールアドレスを使います。申し入れ後は送信日時のスクリーンショットを保存しておくと、後日の証拠になります。
それでも対応がない場合は、個人情報保護委員会(https://www.ppc.go.jp/)への申告が可能です。
なお、iworksが実際に申し入れを行ったところ、先方から以下の返答がありました。
この度はご迷惑をおかけしまして誠に申し訳ございません。今後、貴社へご案内がいかぬようシステム上に登録させて頂くと同時に、グループ会社含め共有いたします。
申し入れに対して、グループ会社への共有を含めた対応を約束する返答が届きました。すべての会社が同様に対応するとは限りませんが、繰り返し届いて困っている場合は、まず申し入れてみる価値はあると思います。
【コピペ用】利用停止の申し入れテンプレート
株式会社〇〇(および貴社グループ会社)
ご担当者様
貴社および貴社グループ会社より、弊社問い合わせフォーム・メール・SMSにて、
複数の担当者名義で繰り返しご連絡をいただいております。
いずれのサービスについても利用の意向はなく、今後のご連絡は不要です。
個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)第35条に基づき、
下記の情報について、貴社グループ全体での利用停止および消去をお願いいたします。
・氏名:
・メールアドレス:
・電話番号:
・会社名/屋号:
本申し入れ後も連絡が続く場合は、個人情報保護委員会への申告を検討いたします。
ご対応のほど、よろしくお願いいたします。
問い合わせフォームへのスパム対策も並行して
今回のケースはWebサイトの問い合わせフォーム経由でメールが届いていました。フォームを公開している以上、こうした営業目的の送信を完全に防ぐことはむずかしいですが、以下の対策で一定程度は抑制できます。
- reCAPTCHAの導入
- フォームに「営業・勧誘目的のご利用はお断りしています」と明記する
取材オファーのすべてが取材商法というわけではありません。誠実な取材依頼ももちろんあるでしょう。ただ、「無料」「費用ゼロ」を強調しながら複数の窓口から繰り返し連絡してくるようなケースは、一度立ち止まって確認することをお勧めします。
この記事が、同様のメールに困っている方の参考になれば幸いです。
この記事はiworksに実際に届いたメールをもとに作成しています。特定の会社・サービスへの評価を目的としたものではありません。
