前回の記事では、ナビゲーションから切り離された古いページが、AI概要の間違った情報源になってしまう問題を取り上げました。今回、別の住宅会社B社の案件を調査する中で、前回とは少し違う種類の問題に気づきました。今回は「情報を出していない」ことそのものが、誤情報を呼び込んでいたのです。
「坪単価」の調査中に気づいた違和感
きっかけは、B社の指名検索対策の一環で、「社名+坪単価」というクエリのAI概要を確認していたときのことでした。
B社は公式サイトで坪単価を公表していません。坪単価という指標だけで住宅価格を比較することの危うさを、むしろ自社の見解として発信している会社です。それにもかかわらず、AI概要には具体的な金額帯が表示されていました。
気になって、同じ会社名で別のクエリ(「社名+クチコミ」)でもAI概要を確認してみました。すると、坪単価の金額帯が、最初のクエリで見た数字とは微妙に異なる金額帯になっていたのです。
同じ会社について尋ねているのに、聞き方を変えるだけで答えが変わる。これは前回の記事で扱った「古いページの放置」とは異なるタイプの問題だと気づきました。
3つの実例|数字がズレる、評価点がズレる、名前が変わる
調査を進めると、同様の性質を持つ問題が他に2つ見つかりました。
| 項目 | 公式の実態 | AI概要が表示した内容 | ズレの種類 |
|---|---|---|---|
| 坪単価 | 未公表(総額での判断を推奨) | クエリによって異なる金額帯が表示される | 情報の空白を外部の推計値で埋めている |
| Googleクチコミの評価点 | 4.6点(26件) | 4.8点 | 実際の数値と微妙に異なる |
| アフターサポート制度の名称 | 「安心サポートシステム」 | 「生涯サポートシステム」 | 外部サイトの言い換え表現をそのまま採用 |
坪単価については、AI概要の出典を確認したところ、公式サイトではなく、比較サイトや紹介サイトが情報源になっていました。B社が坪単価を公表していない以上、AIは何らかの数字で空欄を埋める必要があり、その都度、参照する外部サイトの組み合わせによって答えが変わっていたと考えられます。
評価点数についても、Googleビジネスプロフィールでは「4.6点」と表示しているにもかかわらず、AI概要はそれとは異なる数字を提示していました。
サポート制度の名称は、実在する制度ではあったものの、正式名称とは異なる呼び方でAI概要に表示されていました。おそらく、ある外部サイトが独自の言い回しで紹介した内容を、AIがそのまま採用したものと考えられます。
今回の教訓|情報の空白をつくらない(空白があると、外部情報で埋められる)
前回の記事の教訓は、「更新をやめたはずの情報が、Googleにはまだ見えている」というものでした。
今回見えてきたのは、その裏返しです。自社が発信していない情報についても、AIは「答えなし」のままにはしてくれないということです。何かしらの情報源から数字や表現を集めてきて、埋め合わせようとします。その情報源が正確とは限りませんし、クエリの言い回しによって、参照される情報が変わることもあります。
つまり、AI概要における情報管理には、大きく2つの課題があるということです。
- 更新の問題:古い情報を発信し続けているページはないか
- 空白の問題:発信していない情報を、外部サイトに埋められていないか
前回は前者、今回は後者の実例でした。どちらも「自社が管理できる範囲の外で、自社に関する情報が生成され続けている」という点では共通しています。
iworksで行っている「月次モニタリング」について
こうした問題は、一度直せば終わりというものではありません。AI概要の参照元は日々更新されますし、外部サイトの内容も変わり続けます。
そこでiworksでは、担当しているクライアントについて、毎月「社名+評判」「社名+クチコミ」など複数のクエリでAI概要を確認し、出典元を1件ずつ開いて内容を照合する、という作業を継続的に行っています。
毎月の確認で見つかる課題は、多くの場合1つか2つです。今回のB社のケースでは、坪単価・評価点数・サポート制度名という3つが同時に見つかりましたが、通常はもう少し小さな発見の積み重ねです。見つかった課題は、その都度コンテンツでの解決策(公式ページへの情報追加、AI検索対策記事の作成など)としてご提案しています。
一度で完璧な状態にするというより、毎月少しずつ、公式情報とAIが参照する情報のズレを埋めていく。地味な作業ですが、これが指名検索対策の実務だと考えています。
Web担当者が今日からできること
前回の記事でお伝えした3点に加えて、今回の実例から見えてきたアクションを1つ追加します。
自社が「あえて発信していない情報」がないか、棚卸しする
坪単価、価格帯、対応可能なエリアの詳細など、「あえて明言していない」情報があるなら、それがAI概要でどう扱われているかを確認してください。何も書いていないつもりでも、AIは何らかの答えを用意してしまいます。正しいとは限らない外部サイトの情報から答えを引用されるくらいなら、自社の言葉で答えを用意しておいた方が安心です。
定点観測の頻度を決めておく
一度確認して終わりにせず、月次など決まった頻度で「社名+○○」のAI概要を確認する運用にしておくと、変化に早く気づけます。
まとめ
前回は「隠したつもりの情報が、実は見えている」という話でした。今回は「隠したつもりも何もない、そもそも発信していない情報」が、外部の推計や言い換えによって埋められてしまうという話です。
どちらも根っこは同じで、AIは自社が管理していない情報源も、同じ重みで参照するということに尽きます。公式サイトの更新と、外部で語られている自社の姿。この2つを継続的に突き合わせていくことが、AI概要時代の情報管理には欠かせないポイントと言えます。
