エンドユーザーへのファーストアプローチとして有効となる動画や写真。特にコロナ禍以降、マーケティングや広報活動に動画や写真を活用する企業が増えており、iworksでも動画制作へのニーズは年々高まっています。
ただ、動画には「コンセプトを伝えやすい」「競合他社との差別化が図れる」「認知拡散ができる」などのメリットこそありますが、日々目にする膨大な動画の中から、まず目に留めてもらえなければ、その利点は生かせません。そんな中、人の記憶にしっかりと残り、かつ行動を促すような動画を制作するにはどうすればよいのでしょうか?
今回は、iworksで住宅会社やグランピング施設などを中心に、広告用映像や写真撮影を手がける伊賀上将司にインタビュー。これまでの経歴や手がけた作品、映像制作や写真撮影にかける想いと共に、人の心を動かす作品づくりのポイントを伺いました。
「ものづくりが好き」その気持ちがあってクリエイターに
―映像や写真に関わるようになったきっかけは?
映像に出会ったのは大学生のとき。小さい頃からものづくりが好きということもあって、自主映画制作サークルへ。3回生の頃はサークルの会長となり、自身がリーダーシップをとって作品づくりをするように。2002年に関西学生映画祭でグランプリを、翌年2003年にも同映画祭で審査員特別賞を受賞しました。
写真は、大学卒業後にキャンプの指導員を務めたことをきっかけに始めました。生き生きとした子どもの表情を写真におさめ、キャンプが有意義な活動となっていることを保護者の方々に伝えるのが、当時の私のミッション。映画を制作していたこともあり、伝えたいメッセージを踏まえて構図を考え、写真を撮るのは私の得意分野でした。だからさほど違和感を覚えることなく、写真の世界にも入っていけましたね。
クライアントのニーズを引き出す「情報整理力」が自身の強み
―自身の強みを教えてください。
私は、東証1部上場企業の広報部で、映像制作や写真撮影を担当すると共に、マーケティングにも携わっていた時期がありました。当時、役員プレゼン用の資料作成が業務の一つで、現状の収支を分析し、どうすれば会社の利益が上がるのかについて、上司の意向を聞きながら内容をまとめていました。
この資料づくりで必要とされたのは、ヒアリングした情報から必要な情報とそうでないものに仕分けていく「情報整理力」。これは、現在の映像制作にも役立つスキルになっています。
―映像制作の場で「情報整理力」をどう生かしているのですか?
依頼を受けヒアリングすると、どんな映像や写真にしたいのかがクライアント側で明確になっていないケースが多々あります。
そのようなときは、思いつく限りを話していただき、それを私が整理しながら、相手の真のニーズを引き出すようにしています。「この人はなぜ今この話をしているのか?」を考え、話し手の意図を解釈し、本当に伝えたいと思っている核になる部分を導き出していく。私はこの情報整理力が自分の強みだと思っています。
―やりがいを感じる瞬間は?
クライアントとのヒアリングの中で、伝えたいと思っていることの「核」に触れた瞬間はすごく気持ちがいいですね。
作品は、自分がつくりたいものをつくるというスタンスではなく、クライアントの想いや意向をきちんと汲み取ってカタチにしてこそ、満足のいくものに仕上がります。だからこそ「そういうことが言いたかったんだよ!」という言葉を引き出せた瞬間は、大きなやりがいを感じます。
iworksで取り組んだ「縦動画」の制作が表現の幅を広げる良い機会に
―iworksで印象に残っている作品はありますか?
住宅会社やグランピング施設のInstagramリール動画ですね。
iworksでは、HPに掲載する横型の動画のほかに、Instagramのリール動画を制作することがあります。Instagramのリールは最長90秒の縦型動画。実は、これまで私は縦動画を制作したことが一度もなく、iworksからの依頼ではじめて手がけることに。私にとっては新たな挑戦となっただけに、Instagramリール動画は印象深い作品となっています。
―縦動画の制作はかなり研究されたのですか?
写真も同じように縦横あるので、Photo Creatorとして培ったスキルや感性を活かしつつ、他のクリエイターさんやインスタ&TikTokを使いこなす10~20代の人たちの動画をたくさん見ましたね。どこに焦点を置いて撮影すると、PRしたい人物や商品、サービスの魅力がより伝わるのか、縦の画面を効果的に使うにはどんな構図がいいのか、研究を重ねました。
試行錯誤したこともありましたが、この経験を通じて自らの表現の幅が広がったのを私自身感じています。
―iworksでの仕事でうれしかったことは?
iworksからの依頼で、株式会社ブッキングリゾート様が集客支援を行っている、あるグランピング施設の動画を制作しました。後日、その動画を見た別の施設が「うちにもつくってほしい」とブッキングリゾート様を通じてiworksに動画制作を依頼してこられたと聞きました。それを聞いたときは、本当に嬉しかったですね。
縦動画という新たな世界に出会い、研究を重ねる中でスキルアップできたことも、新規の依頼につながった要因の一つと思えたので、喜びもひとしおです。
映像を制作する上で大切な2つのポイントは?
1.誰にPRしたいのか、自分たちの強みやウリは何なのかをクリアにする!
―映像を制作する上で、クライアント側が事前にしておきたいことは?
誰に、何をPRすれば、期待する効果が生み出せるのか?その点をまず考えてみてください。それが、人の目に留まる映像や写真を生み出すベースになると、私は考えています。
以前、東京で行われたクリエイターエキスポに出展したことがありますが、その際、私は関西に拠点を置くクリエイターとして、自身のウリを「関西発」という言葉で表現し、その3文字だけのポスターをブース前に掲示しました。私たちのターゲット顧客は、関西に拠点を置いているか、関西への進出を考えている企業だからです。結果、ターゲットに対し、効果的にアピールすることができました。
これは映像制作にも言えることで、ターゲットに合わせて自社のウリや強みを明確にしておくことが、動画マーケティングを成功させるうえでの重要なポイントになると考えています。
2.作り手の想いや熱意を映像にのせる。
―作品を制作する上で、伊賀上さんが大切にしていることは?
映像クリエイターである私自身が、クライアントやディレクター、映像制作に関わるスタッフを含めた作り手側の「想い」をきちんと把握し、映像にのせることです。
完成度の高い映像をつくるにはクリエイターの技術が欠かせませんが、技術だけでは人の心を動かすような映像にはなりません。きれいなだけの映像では、人は見飽きてしまうし、残念ながら印象に残ることもありません。だからこそ、作り手の想いや熱意、温度感というものを共有して映像や写真にのせることを、私は何より大切に考えています。
どうせ伝わらない、予算がないとあきらめない!
―ビジュアルがあるというのは大きな強みになりますか?
もちろんです。
例えば大型ショッピングセンターや商店街など、数多くの店が並んでいるような状況では、足を1回止めさせるというところが大事になりますよね。その点、映像を「アイキャッチ」として使えば、見た人の注意を惹きつけることができます。また、映像は店舗ディスプレイやメニューだけでは伝えきれない、店のサービス内容や雰囲気、商品の特徴をわかりやすく伝え、商品を見てほしい、購入してほしいという店側の想いも伝えてくれます。映像を効果的に使うことで認知を高め、見る人の購買意欲をも刺激することができます。
映像は非常に役立つ広告手段ですから、「どうせ伝わらない」とか、「予算がないから」とあきらめず、ちょっと前に一歩踏み出して私たちに相談いただきたいと思っています。「一緒に汗をかきたいって思っている人(私)がここにいますよ!」と、声を大にして伝えたいですね。
Movie & Photo Creator 伊賀上 将司 Masashi Igaue
1982年愛媛県生まれ。
社員数1万人規模の東証1部上場企業でマーケティング、映像制作事業に7年間携わり、知識と技術を習得後、2020年に広告映像制作事業を主とするKoala Production(コアラプロダクション)を設立。以後、ブランディング企画、広告用PR動画制作、広告用写真撮影などを手がける。現在は、専門学校・バンタンデザイン研究所のデザイン・映像学部の講師も務め、映像で食べていきたいという夢をもつ生徒たちに、これまで培った経験と知識を伝えている。また、本業の傍ら、自身のYouTubeチャンネルから動画、写真、マーケティング関連の情報発信も行っている。
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