iworksのコンテンツプロデュース事業の核をなす1つが、エンドユーザーへのファーストアプローチとして有効な「見せる」コンテンツづくり。その中で写真は、商品やサービス、人物のイメージを明確に伝える大切なツールとなります。認知度向上はもちろん、視覚的に瞬時にそれらの魅力を訴求できるビジュアルは、そのブランドがもつイメージやストーリー性の構築においても重要な役割を果たしています。
とはいえ、「こう見せたい」というクライアントの思いをダイレクトに伝える一枚は、そう簡単に生み出せるものではありません。そこには豊富な経験と確かなスキルを持つフォトグラファーの存在が欠かせないのです。
そんな写真の世界で20年以上にわたって活躍しているのが、フリーランスのフォトグラファー森山まゆこ。広告をはじめ、Webや雑誌媒体で、人物、料理、住宅など、幅広いジャンルでの撮影に対応し、多数の実績を誇っています。中でも、小さな子どもから会社経営者まで、はじめて会った人たちの心を開き、お客様の思いに寄り添った一枚を生み出す撮影技術には、多くのクライアントが信頼を寄せています。
今回のインタビューでは、これまで手掛けてきた作品のこと、そして人の心に訴えかける一枚を生み出すプロセスやそこに必要となるものについて話を聞きました。
将来のことを考えたときに思った…私には写真しかない
―カメラマンを志したきっかけは?
大学受験に失敗し、将来のことを悩んでいたときに、ふと考えたのが中学時代から続けていた写真のこと。そのときまでは写真の世界に入ろうとはまったく思っていなかったですね。
―もともと写真を撮ることは好きだったのですね。
中学・高校時代、写真部に所属していたんです。とくにプリント作業に魅力を感じ、暗室にこもってフィルム現像からモノクロプリントの焼き付けまで夢中になってやっていました。当時はアート作品をつくりたいという思いが強かったですね。
ただ、その後就職した写真スタジオで、広告写真の面白さに惹きつけられました。自己満足の作品ではなく、お客様の希望をチームで形にするということが今までにない体験でとても新鮮に感じました。
どんなものでも撮影できる それが私のスタイル
―写真スタジオではどんな仕事をされていたのですか?
3年間スタジオで働いていましたが、その期間はまさに下積みの時代。徹夜は当たり前の厳しい世界でした。そんな中、プロカメラマンのアシスタントを務めながら、商業広告用の商品や人物まで、あらゆるものを撮影しました。
―いつフリーになられたのですか?
結婚と出産を機にスタジオを退職したのが26歳のとき。でもせっかく写真の道に入ったのに、アシスタントのままキャリアが終わってしまうのは、自分の中で納得ができませんでした。だから出産後まもなく、フリーとして活動することに。いろんなカメラマンの方々に師事して、アシスタントを務めながら、人脈をつくっていきました。
―フリーで活動されて間もなく20年だそうですね
おかげさまで、今では広告、雑誌、Webなどどさまざまな媒体に携わり、人物から料理、建築、住宅、商品の撮影までなんでもこなせるようになりました。ある分野に特化して専門性をもつのも一つのスタイルですが、私はさまざまなお客様からお声がけいただき、そのご要望にお応えする中で、いろんなものを撮影できるようになり、仕事の幅を広げることができています。だから私自身は「なんでも撮る」というスタンスで、ずっと活動を続けています。
大切にしていることは「判断力とスピード感」
―お仕事をする上で大切にしていることは?
判断力とスピード感ですね。
カメラマンは、現場に出向いて撮影をするのが仕事。ある程度どんな風に撮影するのか、自分なりにイメージを膨らませて準備こそしますが、お客様のご要望によって、その場で瞬時に判断し行動することも大切だと考えています。
あと現場では、みなが仕事を進めやすい雰囲気をつくることを心がけていますね。
―iworksの仕事で、自身の判断力が活かされたと感じる作品は?
大阪の分譲住宅会社・株式会社ブルーム様のHPやSNSに掲載するビジュアルでしょうか。そのお仕事では、分譲地やモデルハウス、そしてそこに暮らす人々の様子を伝えるための写真撮影を担当しました。
その撮影の中で、ちょっとした光景が私の目に留まったのです。本当に何気ない風景なのですが、瞬時に絵になると自ら感じ、その直感に従ってシャッターを切りました。後日その一枚が、フィオレハウス三国サンストリートのプロモーション用のキービジュアルとして使われ、さらに分譲地に設置される看板にも採用されることになったと伺いました。
―写真からインスピレーションを受けてコピーが生まれたとも聞きました。
「だいすきなきみと三国で暮らす」ですね。このコピーを考えついたというiworks代表の市岡さんから、「このコピーは、森山さんが撮影した写真を見て浮かんだもの。こんなにライター魂を刺激される写真に出会えることはめったにありません」と声をかけていただき、私自身がものすごく感激したのを覚えています。
写真はほぼ無加工、文字のみ載せて使われたというのも、うれしかったですね。
シャッターを切るまでの準備期間があってこそいい仕事ができる
―判断力を身に着けるために、普段から心がけていることは?
判断力やスピード感というのは、やはり経験値に依るところが大きいと思います。経験を積んできたからこそ、このスピードでこれだけのものを撮れるんだという自負が私にはあります。20年以上この仕事をする中で、私が培ってきた財産ですね。
ただ普段から心がけていることがあるとすれば、それは「イメージを生み出す力を養う時間」をもつこと。なかなか忙しくて時間が取れないことが多いですが、美しい景色を見たり、本を読んだりしてリラックスする時間は、自身の感性を磨く大事なひとときになっていると思います。
―現場でシャッターを切るだけがカメラマンの仕事ではないですね。
その通りです。カメラマンの仕事というのは、現場に行ってシャッターを切るだけではありません。次の仕事ではこういう風にしてみよう。こんな依頼が来たら、こう対応してみようとか、いろいろ考えている時間の方が実は長かったりします。私自身は一つの撮影依頼に対して、準備にかなりの時間をかけていますね。そうすることで現場に行っても、斬新なアイデアやイメージが湧きやすくなるんです。
良い写真は現場から生まれる 大事なのは皆が同じ方向を向くこと
―森山さんが考える自身の強みとは?
初めて会う人に心を開いてもらえる、現場の士気を高められるような工夫ができること。
やはり仕事って、その根底に「楽しさ」がなければ面白くありません。カメラの前で、楽しくもないのに無理に笑わされても、良い写真が撮れるはずがない。被写体となる人たちが、心から楽しんでくれるような環境づくりができてはじめて、見る人の心を動かすような写真が撮れるのかなと私は思っています。
―見る人の心を動かす写真。そんな一枚を撮影する上で大事になることは?
やはり広告制作の現場には、クライアントがいて、代理店があって、その下には制作に携わるディレクターやデザイナー、カメラマンがいます。大事なのは、そのすべての人たちが同じ方向を向くこと。クライアントが頭に思い描くイメージに向かって、アイデアを出し合いながら、皆が一体感を持つこと。そうした現場ではやはりいいものが生まれますよね。
―依頼する側は、具体的なイメージを伝えることが大切になりますね。
「すべてお任せします」となると、皆が同じビジョン共有し、一つの方向に向くのが難しくなります。だから、これを撮ってくださいというのではなく、何をどんな風に取りたいのかを具体的にお話しいただけると、その人の思いにぴったりとはまる、メッセージ性の高いビジュアルが完成すると思います。
―これからの目標を教えてください。
今まで撮影で出会った人にたくさん刺激を受け、時には励まされてここまでやって来ることができました。
これからも出会う人に対しリスペクトと感謝を忘れずに、かつ失敗を恐れず、知らない分野にもどんどんチャレンジしていきたいと思います。
フォトグラファー 森山 まゆこ Mayuko Moriyama
フリーランスでの撮影歴はまもなく20年。人物、料理、住宅など、幅広い撮影に対応。広告全般、Webや雑誌媒体などにおいて多数の撮影実績を持つ。
プライベートでは、2児の母。趣味は自然とのふれあいで、近場の里山や川に行って生き物観察などを楽しんでいる。
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▼森山まゆこの制作実績▼
撮影・掲載協力