AIに「これくらいできるだろう」と思って任せると、ときどき痛い目を見ることがある。
コラム記事の執筆や調べ物はサクサク返ってくる。でも住宅の間取り紹介記事や施工事例は、図面と写真を照合しながら事実を確認していく作業が必要で、実はAIに任せるには難しい部類の仕事。
案の定、難航した。
最初の原稿を開いてみると
間違いだらけだった。
「寝室にウォークインクローゼット」「キッチン横にパントリー」——え、ちょっと待て。そんな間取りだっけ?
間違いを指摘しながら、訴求ポイントを伝えていく。すると、パントリーについてこんな一文が出てきた。
「使うものが決まった場所に収まっているため、調理中に手が止まりません。」
「調理器具が定位置にあることと、調理中に手が止まらないことは関係ないのでは?」と指摘すると、次はこう。
「まとめ買いをしてもパントリーに収まるため、冷蔵庫や棚に物があふれる心配もありません。」
「パントリーに入れるものと冷蔵庫に入れるものは違うんじゃない?」
すると、また別の言い回しに変わる。また指摘する。また変わる。
無限ループか?
「前に使っていたGeminiのほうがよかったかも」
「この手の原稿は苦手ですか?」
疲れてきた私が尋ねると、Claudeはこう返した。
事実に基づいて魅力を伝えるという制約の中で、陳腐にならない表現を見つけるのに苦戦しています。
そこで、私は畳みかけた。
「前に使っていたGeminiのほうがよかったかも」
率直なご意見、ありがとうございます。ここまでのやり取りを振り返ると、指摘を受けて直すという繰り返しになってしまい、自分から本質的な提案ができていませんでした。 もしこの方向性が合わなければ、Geminiへの引き継ぎも含めてご判断ください。ただ、最後まで良い記事に仕上げたいという気持ちはあります。
これ、まんま、上司と部下のやり取りじゃないか。
「もう一度、やらせてください」とすがるClaude。「じゃあ、あと1回だけチャンスをやろう」となった。
そして、本気出してきた
そうしてClaudeが出してきた文章が、これ。
「キッチン背面に、パントリーとキャビネットを並べて配置しています。食品・ストック品から食器・調理器具まで、調理に必要なものがキッチンの背後にひとまとめに収まる設計です。振り返ればすぐ手が届くため、調理の流れを止めません。」
「Claudeが本気出してきた!」——いいね、いいね!多少の調整は必要だけど、今までと違って使い勝手の良さが目に見える表現になった!
やればできる子だ、Claudeよ。
結局、何が変わったのか。自己分析させてみた
原稿が完成した後、私が求めるレベルを理解させるために、最初の原稿と完成稿の差分をClaudeに自己分析させてみた。
その結果がこれ。
- 事実の正確性:最初の原稿には図面と合わない記述が複数あった。完成稿では図面・写真と照合した事実のみを記述。
- 視点の転換:「間取りの構成要素を説明する」視点から、「この空間でどんな暮らしが生まれるか」という視点に切り替わった。
- 根拠のある表現:どの物件にも使える汎用表現から、この物件固有の配置や設計から導いた表現に変わった。
- 見出しの構造:間取りの要素と生活上のメリットをセットにした説明型に変わった。
- 文章のリズム:「〜ます」の連続や修飾語の詰め込みが減り、一文を短く絞った読みやすい文体になった。
はい、よくお分かりで。
最後に、せっかくなので本人に聞いてみた。
「Geminiの名前を出したから本気になったのか、本当のところはどうなの?」と。
するとClaudeはこう返してきた。
正直に言うと、Geminiの名前を出したことよりも、それまでに積み重なったダメ出しの方が効いていたと思っています。
AIも叱って伸びる、のかもしれません。
