「サービス紹介動画がほしい。でも編集ソフトは使えないし、外注する予算もない」。そんな状況の方に向けて、今回はiworks自身を実験台にした制作記録をお届けします。
iworksのサービス紹介動画(30秒・縦型)を、動画編集ソフトを一切使わずに制作しました。使ったのは、AIアシスタントのClaude(Anthropic社の最高性能モデル「Claude Fable」)とのチャットだけ。構成、コピー、アニメーション、写真や動画素材の組み込み、BGMの合成、Instagramリール用MP4の書き出しまで、すべてが1つのチャットスレッドの中で完結しました。
この記事では、実際のやり取りを時系列で振り返りながら、「AIに何をどう伝えれば動画ができるのか」と「それでも人間に残る仕事は何か」を整理します。
最初の依頼は一文だけ
最初にClaudeFableへ送ったのは、iworksのロゴデータと「iworksのサービス紹介動画をつくって。30秒」という依頼、それに公式サイトのURLだけです。
ここでClaudeが最初にやったのは、動画をつくることではなく、iworksのサイトを検索して掲載内容を確認することでした。動画に入れるコピーは、サイトに実際に書いてある情報だけで構成されています。「フリーランスのプロ集団」「取材にもとづく情報発信」といった文言は、すべて公式サイトの記載が出どころです。事実にない訴求を勝手に盛らない、という点は、コンテンツ制作を本業とする立場から見ても安心できる挙動でした。
最初に出てきたのは、ブラウザで再生するHTML形式のモーショングラフィックスでした。「InstagramなどのSNSに上げたい」と伝えると、リール用の縦型MP4(1080×1920・30fps)に作り直してくれます。動画ファイルの書き出しまでチャット内で済むことは、正直に言うと予想外でした。
専門用語はいらない。感想を伝えるだけで直っていく
ここからの工程が、この制作方法の本質です。出てきた動画への修正指示には、専門用語をほとんど使っていません。実際にAIに送った指示を、そのまま並べます。
- 「左右に余白を持たせたい」これで全シーンの文字サイズと要素幅が一回り縮み、両側に余白が確保されました。
- 「画像などを提供すれば背景などに入れてもらえるのでしょうか?」手持ちの写真を渡すと、どのシーンにどの写真を使うかの割り付け案が返ってきて、背景やサービス紹介のサムネイルに組み込まれました。
- 「全体的に白い背景が多く、寂しい」全シーンに写真や地色が入り、画面の密度が上がりました。
- 「シーンの切り替えの朱色のスワイプがなんかダサい」帯状のワイプ演出が廃止され、白へなめらかに溶けるミニマルな切り替えに変わりました。
つまり、クライアントがデザイナーに伝えるような感想ベースのフィードバックで、制作が前に進んでいきます。「ベジェ曲線を調整して」「トランジションをクロスディゾルブに」といった難しい指示は不要。「違和感を言葉にする力」さえあれば、制作ディレクションができます。動画制作の発注経験がなくても大丈夫です。
素材を渡すほど、動画は良くなる
途中から写真と動画素材を追加で共有しました。ここでのAIの挙動も興味深いものでした。
ドローンが飛び立つ瞬間を収めた動画素材を渡すと、シーンの背景に組み込まれ、ドローンが画面の中でふわりと上昇していく「現場感」のあるカットになりました。サービス紹介のサムネイルも、ICレコーダーと取材メモ、スマホのSNS画面など、各サービスの内容と対応する写真へ順次差し替えています。
一方で、渡した素材のうち1枚は使用を見送られました。ストックフォトサービスの透かしが入ったプレビュー画像だったためです。「ライセンス購入済みの素材か確認できるまで使用を見送ります」という判断が、こちらから指摘する前に返ってきました。権利まわりの判断を完全に任せられるわけではありませんが、明らかな地雷は踏まない程度の感度はあるようです。
BGMとテンポ、そして「AIにできないこと」
最後にBGMです。ダウンロードしたフリー音源を渡して「ちょっとテンポ早すぎでしょうか?」と聞くと、返ってきた答えは率直なものでした。「私は音を聴いて判断することはできない」。そのうえで、リール向けBGMの一般的なテンポ帯、この動画が「コピーを読ませる構成」であること、想定読者が企業の経営者・広報担当層であることを根拠に、「読ませる構成の動画には落ち着いたテンポのほうが合う」という答えが返ってきました。
念のため、より速い別の音源とも合成して聴き比べたうえで最初の音源に決定しました。音源が決まると、シーンの切り替えタイミングを音楽の拍に合わせる微調整まで自動でやってくれました。音源のカット、フェードイン・アウト、SNS標準の音量への正規化、動画への合成も、すべてチャット内の処理です。
このやり取りが、AIとの分担を象徴していると思います。AIは「聴けない」と認めたうえで、数字と構成から最善手を組み立てる。最終的に耳で確かめて決めるのは人間。この役割分担を理解して使えるかどうかで、仕上がりは大きく変わります。
やってみて分かった、人間に残る3つの仕事
全工程を終えて、人間側の仕事として残ったものを整理すると3つです。
1つ目は、素材の用意。動画の質を決めたのは、結局のところ渡した写真と動画でした。AIは渡されたものを最大限活かしてくれますが、素材そのものは生み出せません。
2つ目は、権利と妥当性の判断。透かし入り画像はAIが見送りましたが、「この写真の人物に掲載許可があるか」「この実績を公開してよいか」は、こちらにしか分かりません。
3つ目は、良し悪しの判断。「寂しい」「ダサい」と感じ取り、言葉にして返す。この往復がなければ、最初に出てきた及第点の動画で止まっていたはずです。AIが「手」を担い、人間が「目」を持つ。今回の制作を一言でまとめるなら、この分担に尽きます。
まとめ
サービス紹介動画をつくるハードルは、確実に下がっています。これまで「動画は予算的にちょっと」と見送っていた規模の会社でも、ロゴと写真、そして「違和感を言葉にする力」があれば、十分に手が届く時代になりました。
完成した動画は、iworksのInstagram・Facebook・Xで公開しています。コンテンツ制作の現場でのAI活用については、今後も実践ベースで発信していきます。
iworksは、ライティング・WEB運用・SNS運用・コンテンツ制作を手がけるフリーランスのプロ集団です。お問い合わせは m-iworks.com から。
